〔シリーズ連載〕NTTコミュニケーションズ レポート(6)
「OCN緊急地震速報」個人サービス用アプリケーション「なまずきんDesktop」の開発
NTTコミュニケーションズでは、OCN IPv6サービスで“「緊急地震速報」IPv6マルチキャスト配信”を個人向けに開始した。このサービスで実際に速報の情報を受信し、ユーザーに見やすいインターフェイスで表示するデスクトップ・アプリケーションが、ヴァル研究所が開発した「なまずきんDesktop」である。
今回は、NTTコミュニケーションズ OCNサービス部バリュー開発グループの齋藤 元明氏とヴァル研究所 研究開発部 研究開発チームの新井 剛氏に「なまずきんDesktop」の開発について聞いた。
-緊急地震速報サービスにIPv6マルチキャストを使う理由は?
齋藤氏:緊急速報は“緊急性”がなにより重要で、1秒の差が大きな違いとなります。そこで、同報性を高め遅延を抑えた配信が可能な方法を採算を含めた形で検討した結果、技術的な解決策としてIPv6マルチキャストという方法が浮上しました。ただし、緊急地震速報サービスのためにその仕組みを作ったということではありません。OCN IPv6サービスが既に開始されており、これを上手く利用することで実現できるという条件が整っていたことが大きいですね。IPv6が利用できるネットワークを持っていたことが、こうしたユニークなサービスの実現に役立っているといえます。

NTTコミュニケーションズ OCNサービス部バリュー開発グループ
齋藤 元明氏
-なまずきんDesktopの開発の経緯は?
新井氏:なまずきんDesktopの前に、VAL研内部に原型にあたるソフトウェアが出来ていました。これは、今回の緊急地震速報サービスでもパートナーとなっている気象会社のハレックスからの依頼で作成した「なまずきん」です。
「なまずきん」では、通信にはIPv4を使用していました。IP-VPN環境を想定し、TCPコネクションを常時張りっぱなしにして、ユーザー側には専用端末を設置して利用していました。この方式は、端末台数が少なく、かつ、用途の限られたサービスの場合には良いのですが、オフィスのフロアすべての事務用PCなどへの配信サービスには向いていません。なぜなら、ネットワークを用意するのも簡単ではありませんし、サービスを提供するサーバ側の負担も大きくなるからです。そこで、サーバ側の負担を軽減し、かつユーザー側でもより簡単に利用できるようにしたいということで改造を考えました。
そうして出来たのが、いわば「なまずきん ライトバージョン」です。このときは、同報通信を可能にするためにIPv4 UDPブロードキャストを使用しました。ただし、この当時はごく軽量なインターフェイスで、警告を表示だけという感じでした。これにユーザーからの反応や社内での検討結果を反映して、簡単な地図表示やカウントダウン、震度予想などを追加した結果、現在のなまずきんDesktopのユーザー・インターフェイスが出来上がりました。

ヴァル研究所 研究開発部 研究開発チーム
新井 剛氏
-IPv4 UDPの問題点は?
齋藤氏:配信時の遅延という観点では、ユーザー個々の条件によっても変わってきますが、IPv4 UDPでもそう遅れるわけではありません。しかし、IPv6マルチキャストのほうが不特定多数の宛先により安定的に低遅延の通信が可能になるはず、ということはいえるでしょう。さらに、IPv4 UDPでは、インターネット側からプッシュ型で送られてくる情報をルータのNAT機能を越えて受信するためにはファイヤーウォールやルーティングの設定を変更する必要があり、ユーザーにとってかなり大きな障壁になると考えています。IPv6マルチキャストを利用することでこうした問題はすべて解決できます。
-なまずきんDesktopの機能は?
新井氏:気象庁の緊急地震速報では、地震発生の時刻と場所、緯度経度、マグニチュード、震源の深さ、予想される最大震度などの情報が送られてきます。通知はマグニチュードが3.5以上、または最大予測震度が3以上の地震発生時等に発報されます。緊急地震速報サービスではIPv6マルチキャストを利用してこれを登録ユーザーに配信します。情報の配信を受けたなまずきんDesktopは、あらかじめユーザーが登録したユーザーの現在地の情報と、ハレックスから提供された地盤の堅さなどの情報を組み合わせ、さらにハレックスが作成した計算式によってユーザー宅に「何秒後に震度いくつの地震が到達する」かを計算し、画面に表示して警告を行ないます。
計算はすべてクライアント側で実行されますが、この計算自体はあまり時間が掛かるものではありませんので、演算速度による遅延は心配ないレベルです。到達予想時刻を正確に知らせるためにはPCの時刻設定が正確である必要があるので、NTP(Network Time Protocol)を利用した時計同期の機能も組み込まれています。
-今後の展開は
新井氏:なまずきんDesktopに関しては、今後「音声告知」や「カウントダウン方法」など、ユーザーがより直感的に理解しやすいような通知方法を工夫していきたいと考えています。現在でも「緊急地震速報を受信しました」という警告音声は流れますが、より詳しい情報を音声で通知することを考えています。
齋藤氏:IPv6マルチキャストを使うとサーバ側からプッシュ型の同報通信が実現できるので、今回の緊急地震速報サービスのほかにもさまざまな応用が考えられます。また、情報提供やニーズがあればですが、なまずきんDesktopを拡張して地震以外の気象や災害に関する情報を配信することもあり得るかもしれません。緊急地震速報サービスに関しては、常時PCを起動しているわけではないユーザーもいることから、2008年2月には専用受信端末が発売される予定もあり、さらに使いやすくなると期待しています。
なまずきんDesktopに関しては、PC上のアプリケーションなので機能拡張やバージョンアップがしやすいという特徴がありますので、それぞれ需要に応じて使い分けられるようになっていきます。
「OCN緊急地震速報」は、地震発生時に気象庁が配信する緊急地震速報を、専用の受信端末に再配信するサービス。OCN IPv6を終端されたパソコンにOCN緊急地震速報受信アプリケーション「なまずきんDesktop」をインストールすることで受信することができる。
メイン画面では、震源地、推定震度や地震が到達するまでの時間などの情報が表示され、さらに地震詳細情報からは、マグニチュード、震源の深さ、P波、S波の到達予想円などの情報を得ることもできる。 設定時に位置情報を設定することで、その近辺の地盤情報なども考慮された精度の高い通知が可能。

■なまずきんDesuktopのメイン画面

■地震詳細情報
[ヴァル研究所]
http://www.val.co.jp/
[NTTコミュニケーションズ]
http://www.ntt.com/
[OCN緊急地震速報]
http://www.ocn.ne.jp/jishinsokuho/





