IPv6 Summit in OSAKA 2006 レポート

IPv6 Summit in OSAKA 2006 レポート

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~関西人のリアリズム、NGN、イノベーション

IPv6Style編集部
青山祐輔

 10月20日に大阪で、インターネット協会と関西情報・産業活性化センター、サイバー関西プロジェクトの3者によって「IPv6 Summit in OSAKA 2006」が開催された。

 午前中はサイバー関西プロジェクトによる「CKPセミナー v6端末最前線」、午後からはIPv6 Summit in OSAKA 2006という合体開催で、丸一日にわたってIPv6に関する基礎から応用、さらにはNGNやデジタルディバイドの問題まで幅広い話題が扱われた。

 CKPセミナーでは、サイバー関西プロジェクト幹事長で奈良先端科学技術大学院教授の山口英氏によるセッションと、マイクロソフト株式会社最高技術責任者補佐の楠正憲氏によるWindows Vistaの紹介が行なわれた。

 午後からのIPv6には、大阪都市圏IPv6活用推進フォーラム座長で奈良先端科学技術大学院大学教授の砂原秀樹氏と、インターネット協会IPv6ディプロイメント委員会委員でアラクサラネットワークス株式会社主任技師の新善文氏による基調講演が行なわれたのち、山口氏をコーディネーターとして「IPv6 ready な社会がやってきた!? ~生活者のネットワークとその展望~」と題したパネルディスカッションを行なった。

 ディスカッションのパネリストは、CKPセミナーに引き続いてマイクロソフトの楠氏のほか、NTT西日本研究開発センタ所長の木村丈治氏、松下電工株式会社 EMITミドルウェア研究所 IPv6主担当の藤原憲明氏、NTTコミュニケーションズ 先端IPアーキテクチャセンタ ユビキタスP担当部長の宮川晋氏という、豪華なメンバーがそろった。

IPv4におけるイノベーションはもはや存在しない~山口英教授

 山口氏はセッションにおいて、「IPv6とエンドポイントセキュリティ」と題して、主にセキュリティの観点からIPv6のメリットをアピールした。

 その中で、セキュリティを確保することがIPv4だけででも大変なのにデュアル化したらさらに大変なのではないかという疑問があることに対して、1年前ならそうだったかもしれないが、現在は様々なコンポーネントがそろって来ており、またIPv6自体に「技術的な特性として管理性を向上させる要素が非常にたくさんある」とした。


山口 英氏

 そして「IPv6というものは、基本的な認識はIPv4が持っていた欠陥を出来るだけ直したもの。全然別なものを作ったと言うよりも、IPv4が持っていたコンセプトで上手くいかなくなったところを直していこう」というのが、基本的な認識だという。

 したがって、現在では「IPv4ネットワークっというのはすでに過去の残滓」であり、IPv4におけるイノベーションはもはや存在していない。現在のインターネットにおけるイノベーションは、すべてアプリケーション領域のものでしかないという。

Windows Vistaはモバイル&コラボレーション~楠正憲 マイクロソフトCTO補佐

 楠氏からは、2007年1月に発売予定のWindows Vistaについてのプレゼンテーションが行なわれた。

 ムーアの法則に代表されるように、コンピュータの高性能化、ネットワークのブロードバンド化によって、情報量はどんどん増加しているが、人間の処理能力は同じように伸びるものではない。したがって、多くの情報をどのように人間に見せるか、整理するのかが今後のパーソナル・コンピューティングにおいては大事になっていくという。

 そのためには、よりネットワークへのコネクティビティが重要になっていく。いつでもどこでもインターネットにつながるだけでなく、いつでも、その場で近くのヒトのPCと簡単に接続して、データをやりとりできるようなことも必要になっていく。「いろんなデバイスとデバイスとを、あるいはヒトとヒトとを結びつけていく」。


楠 正憲氏

 そして、そのようなネットワーク環境でありながら、かつセキュリティも向上させなければならない。特にWindowsのようにさまざまなユーザーが利用するものは、専門的な質気がなくても安全に使えることが必要だ。

 楠氏は、それらのさまざまな機能がVistaでは実現しているといい、かつそれらはIPv6によって可能になったという。これをもって「IPv6はVistaにとって空気みたいなもの」と、VistaとIPv6の結びつきの強さを強調した。

IPv6はインターネットにいる八百万の神々をつなぐ~砂原秀樹教授

 砂原氏は「関西圏におけるIPv6展開の取り組み」と題して、地方自治体におけるIPv6をどのように導入し、活用していくかという問題を中心に話した。

 手始めとして、自治体のウェブサイトをIPv6に対応させるというプロジェクトからはじめ、地方自治体の大きな役割の一つである災害対策にいかにして活用するかといった実証実験をおこなってきたという。

 IPネットワーク上で、大多数に同時に情報を配信するというのは、技術的にもハードルの高いものだが、IPv6上でマルチキャストを利用したシステムを構築することで、10分以内に数千件に対してプッシュすることに成功したという。


砂原秀樹氏

 また、関西からインターネットにどのように貢献できるかという点については、常に人の方を向いて仕事をするという気質がインターネットに向いているという。技術や道具に振り回されるのではなく、あるときは顧客として、事業者として、常に人の方を向いている関西人のリアリズムが、これからのインターネットに重要だということだ。

 「会社のために仕事をするのではなく、自分のカスタマー、あるいは自分のことを使ってくれる人の方を向いて仕事をするというのは非常にいい精神。それは関西初の文化で、それはインターネットに向いている」(砂原氏)

 そして、ユビキタスということばについても「僕は嫌いな言葉」だという。本来はキリスト教由来の言葉で、唯一の神がいつでも、どこにでもいる意味であり、これはインターネットの発送ではないした。

 「さまざまなところにいろんな役割をもったいろんな神がいる」「八百万の神」こそがインターネットを表わしており、この自立分際して動いている神を協調させてサービスを組み立てていくか、そしてそれらをつなぐ為のものが「IPv6」であるとまとめた。

IPv6を“日常生活”に普及させるためには? ~パネルディスカッション

 パネルディスカッションでは、山口氏がコーディネーターを務め、楠氏(マイクロソフト)、木村氏(NTT西日本)、藤原氏(松下電工)、宮川氏(NTTコミュニケーションズ)がパネリストとして参加した。

 木村氏は、NTT西日本におけるデータ通信サービスの歴史を振り返り、急速に帯域と加入者数が増加していることを示した。8月にはFTTHの加入者が200万人を突破し、またそのウチの半数以上がIPv6に対応したフレッツ・光プレミアムの会員であり、これを持ってネットワークのIPv6化が進んでいることの証とした。

 NTTがIPv6に注力する理由の一つとして、NTT法の制限によってインターネットに直接通信できるIPv4サービスが行なえないが、それぞれの地域会社ごとにIPv6アドレスを利用するサービスは実施可能だという現実がある。

 しかし、アプリケーションサービスの立ち上がりの遅れが、IPv6の普及の妨げになっているという。IPv6ならではのサービスのとして木村氏が有力視するのは、マルチホームサービスだ。潤沢なIPアドレスを、ユーザー端末に対して複数割り当てることで、目的別に複数のネットワークを使い分けるというイメージだ。

 最後に木村氏は、NTTの研究所で開発中の新しいインターフェイスを紹介した。プロジェクターで人の手のひらに直接情報を投影するというもので、人の手の形や色から個人を識別して、パーソナライズされた情報を提供することができる。これが人や物に直接IPが振られるようになった世界の新しいインターフェイスの未来像の一つだとまとめた。

 楠氏は、テクノロジーの段階的な普及という視点からIPv6の普及について持論を広げた。96年頃、ネット上でのショッピングを不安視する声が多かったことから、電子マネーについて研究していたが、結局は今ではクレジットカードやおサイフケータイが、簡単に普及してしまった。この経験から、セキュリティや使い勝手について、ガチガチに考えるよりも、ネットワークのサービスは案ずるよりも産むが易しだと実感したという。

 一方で、2003年にマイクロソフトがリリースした「3degree」というp2p技術を利用した音楽共有ソフトについても、よい経験になったという。

 3degreeは、メッセンジャーでオンラインになっている友人と、同じタイミングで同じ曲が聴けるというツール。法的な問題はすべてクリアしていたものの、国内の音楽著作権管理団体が難色を示したため、ソフトウェアを公開したもののプレスリリースなどはまったく流さなかったため、ほとんどメディア上でも紹介されることがなかったという。

 これらの経験から、テクノロジーを普及させるためには、アピールの仕方、利用方法の見せ方などが重要だと認識したとまとめた。

 藤原氏は、省エネの観点からIPv6への期待を語った。現在、環境省が「チーム・マイナス6%」というキャンペーンを行なっており松下電工もそれに賛同しているが、実際には6%では十分ではなく、CO2の排出量を12%削減しなければ間に合わないのだという。

 これに対応するためには、たとえば現在あるビルの省エネ化が必要だ。一つのビルを建ててから、耐用年数が過ぎるまでのコストを考えると、その内の建設にまつわるイニシャルコストは25%に過ぎず。残りの75%はすべてランニングコストだ。さらにそのうち25%が光熱費だという。そこで高度なビル管理を導入することで、NEDOの実証実験では3割もの省エネが達成できた。

 ビル管理といっても、実際に管理しなければならないポイントは膨大な数に上る。たとえば大きい規模になると六本木ヒルズでは16万ポイントにもなる。これをIPで管理するためには、IPv6は必要になってくる。今後の課題としては、ビル単位だけではなく地区単位で管理していくために、相互接続が問題になっていくのではないかという。

 また、もう一つのIPv6の大きな用途としてホームネットワークも取り上げた。情報のブレーカーというコンセプトをもとに、家庭のネットワークを一元管理する「くらし安全ホームパネル」や、エンターテインメント分野ではネットTVなどの普及が、家庭におけるIPv6普及の一つのきっかけになるのではとまとめた。

 宮川氏は、コミュニケーションクロージャーという概念を提唱した。現在のIPv4のネットワークはどこにファイヤーウォールやNATが存在するかわからず、とにかく不自由なネットワークだという。それをIPv6によってフラットでオープンなネットワークを実現したのち、レイヤー4、すなわちアプリケーションレイヤーによって接続を管理しようというのが宮川氏の主張だ。

 そのようなネットワークのメリットとして、ユーザーもまたサービス事業者側もなんでも思いついたアイデアと、低コストで実行することができる点にあるという。そうすることで、さまざまなサービスが登場しそこにロングテールが発生し、なかにはそこから大きなビジネスとなるものも出てくるとまとめた。


左から、山口英氏、宮川晋氏、藤原憲明氏、楠正憲氏、木村丈治氏

 後半のフリーディスカッションでは、山口氏からIPv6普及のための「キラーアプリケーションはなんだろう?」という質問が投げかけられた。

 宮川氏が、任天堂などによるオンラインゲームでは、と口火を切ると、山口氏からは実父がオンライン株取引を初めてからヘビーなネットユーザーになったエピソードを紹介した。しかし、最大の問題はそういったエッジなユーザーではなく、それ以外の4千500万人の普通のブロードバンドユーザーをどうするかが課題として残る。

 聴講者からも質問が飛び出した。「v6とNGNの関係は?」という質問に対して木村氏は「今のNGNの議論ていうのは、基本的には電話交換機の寿命問題が中心で、速く電話交換機をリプレイスしないと電話の維持管理が出来なくなる」ということだという。そのため、いかにして「電話網を置き換えられるIP網を作るかっていうことに最大の精力がつぎ込まれている」のだという。

 また、もう一つの視点として今後、音声通話は固定回線ではなく携帯電話の比重が高まっていく。したがって固定回線を主に扱っている事業者や通信機器メーカーの収入が減ることになるが、それを補うための新しいビジネスをどうするかという問題でもあるという。

 「電話が収入がなくなるんですね、間違いなく。その次の糧を何に求めるか、というのがNGNなのだと思っています」(木村氏)

 具体的なIPv6とNGNの関係については「v6は少し横に置かれている」状況だという。電話網をすべてIP網で置き換えるためには、必要なアドレス数から考えても本来はIPv6が必然だが「それも間に合わないのでとりあえずIPv6は横に置いてある」のだという。

 山口氏からは、IPv6の普及期にNGNが登場したことについて「ネットワークのインフラが変わっていくタイミングで、その動きを加速したりするものが出てくることはすごくいいことだと思う」という意見も出た。

 しかし「本当に今のNGNというのがトランジション(移行)のイグニッション(加速装置)になるためには、もう少し何かやらないといけない」と、現状では不十分であることを留意した。

■IPv6 Summit in OSAKA 2006
http://www.iajapan.org/ipv6/summit/OSAKA.html

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