〔シリーズ連載〕NTTコミュニケーションズ レポート(1)
情報家電に必要な条件
デジタル家電が次々と家庭に入り込んできている。ハードディスクレコーダは、一家に一台の必需品を超えて、一人に一台という風潮にもなろうかという勢いだ。
テレビは衛星に続いて地上波デジタル放送がスタートし、店頭にはデジタルハイビジョン対応のフラットパネルディスプレイが花盛りだ。放送のデジタル化によってAV機器のデジタル化とネット対応は急速に進んでいる。これによって、たとえばTVでデジタル放送のデータ放送コンテンツを見ているうちに、インターネット通販のページに画面が移り、そこで買い物をしたりといったことや、視聴者参加型の番組で出演者とTV電話で直接顔を見ながら通話したりといったことが実現できるようになった。
もう一つ家庭の中でネットワークが必要とされるのがセキュリティだ。昨今、安心・安全を求める声は高まる一方だが、それにあわせて登場しているさまざまなセキュリティサービスは、ネットワークを必要としている。たとえば、自宅の様子を携帯電話から監視カメラに接続して映像で確認したり、子供に持たせたGPS内蔵端末によって現在地を常に把握できたり、部屋の中に人がいるはずなのに一定の時間が経過しても伝統やドアに動きがないと通報したり、と言った具合だ。
これらは単に通話のためにネットワーク回線を利用するだけでなく、複数のデジタル機器同士が相互にデータ通信を行ない、連携することで一つのサービスを実現しているのだ。しかし、このようにサービスが複雑化し、ネットワークにつながる端末が多様化すればするほど、問題になってくるのが相互接続性だ。単純にデバイスがつながるというだけでなく、セキュリティや認証といったことが、どのデバイスからでも利用できる必要がある。
そして、もう一つ重要なことは「簡単」だということだ。現在のネットワークは、一般の消費者にとっては非常に難しいものだ。インターネットを日常的に使っているパソコンユーザーであったとしても、ネットワークの設定を手動で行なおうとすると、手間取ってしまうほどだ。まずこれを簡単にしないことには、家電を気軽にネットワークに接続するような利用方法は普及しないだろう。そして、これらを解決するためにネットワーク事業者やメーカーが共同で提唱している企画が「UOPF」だ。
家電とネットの間から生まれたUOPF
UOPFは2004年2月に、主要なISPや家電メーカーなど14社があつまって発足した。それまでメーカーごとにバラバラに開発されていた、家電をネットに接続する上で必要な技術を統一し、またネットワーク事業者の方からもそれをサポートすることで、統一的な企画として特定のISPやメーカーによらず、誰でも簡単に安全にネットに情報家電を接続できるようにすることを目的に設立されたものだ。
現在では50社ほどが参加し、4つのワーキンググループに分かれて作業を行なっており、その成果はガイドラインとして公開されている。このガイドラインは誰でも入手可能だ。
具体的に情報家電の普及に必要なことをあげてみよう。簡単に言えば、機器がネットワークにつながるときにその設定を簡単に行なうこと。それから、そこの機器を使っていろんなサービスを行なうときに、安心・安全を確保するための認証ですね。そして、有償サービスを行なう上で必要な課金決済等のインターフェイスと、通信の暗号化だ。
上記のそれぞれの要素を、UOPFでは4つのワーキンググループが分担して担当している。ワーキング1では、簡単設定と認証と課金決済のインターフェイスの標準化を行なっている。主にクライアントサーバー型のサービスでの利用を想定しており、ネット対応TVからの動画や静止画などの有償コンテンツに対するアクセスコントロールの仕様を決めている。
ワーキンググループ2では、ネットワークを経由して機器をコントロールするリモコン機能や、またTV電話のような相互通信を行なうサービスのプラットフォームとなる技術を担当している。ワーキングループ3では、技術仕様の策定ではなくネットワークの設定に必要な各種の用語や機能の名称を統一したり、またユーザーサポートの上で必要になってくる統一的な作業手順を決定したりといった部分を担当している。
ワーキンググループ4は、他のワーキンググループからは遅れて2004年9月にスタートしたもので、動画配信に関する技術開発を行なっている。
以上のように、UOPFでは情報家電の普及のために必要な要素を、主に4つの分野に分けてそれぞれ標準化作業をおこなっている。その中でも基本技術として重要なのが、デバイスとデバイス、機器と機器を接続するという、情報家電の基本的なプラットフォーム機能を担当しているワーキンググループ1だ。この機器と機器が連携してダイナミックなサービスは、マシン・トゥー・マシン(M2M)と言われる概念であり、これを実現するための技術的なベースになっているのが、NTTコミュニケーションズが開発したm2m-xだ。
ネット家電を実現するための基盤技術「m2m-x」
「m2m-x」という名前は「モノとモノの間の通信を」「X=何でもいつでもどこでも(実現する)」という意味でつけられたという。ネット家電間、あるいはネット家電とコンピュータ間のIPv6による通信を、簡単かつ安全に行える環境を実現することを目的とした仕組みだ。
現在のネット家電の利用方法では、たとえばダイナミックDNSを利用して自宅に設置されたネットワークカメラに名前でアクセスすることが行われているが、これでは誰でも不正な操作や攻撃ができてしまう。また、ネット対応のビデオレコーダに対する録画予約では、インターネット上のサーバにユーザが登録を行い、このサーバに対してビデオレコーダが定期的にアクセスすることで更新データを取り込むことが行われている。しかしこれではリアルタイムな制御ができない。
m2m-xでは、こうした問題を回避し、ネットワーク接続された機器が、特定の相手と直接にやり取りするための管理機能を提供する。では、実際にマシン・トゥー・マシン通信を実現するにはどのような方法が取られているのだろうか。
インターネットの世界において端末と端末が直接通信するためには、互いの居場所であるIPアドレスを特定しなければならない。したがって、何らかの方法で端末の名前からIPアドレスを割り出す、すなわち名前解決というプロセスが必要となる。インターネットの世界の名前解決といえばDNSが挙げられるが、このモデルでは端末の認証が行われなかったり、動的にIPアドレスが変化する端末にとっては効率が悪かったりと、M2M通信を実現するには問題が多い。
そこで、m2m-xでは、SIP(Session Initiation Protocol)を利用して相互通信を実現しているのだ。SIPはピア・ツー・ピアの通信を行うための名前解決やセッション制御などをおこなうプロトコルで、現在ではIP電話を実現する技術として知られている。また現在標準化が進められている次世代通信基板「NGN」においても、コア技術として採用されることにが決まっている。
m2m-xでは、このSIPの仕組みに、強固なセキュリティを実現するための拡張を加え、機器同士が安全に、簡単な設定で、低コストな通信ができるようにしているのだ。
もう少し具体的に解説しよう。まず、接続相手の認証、通信の暗号化のための設定や、それぞれの端末に対するアクセスコントロールは「m2m-xマネージメントサーバー」が集中的に行う。この制御のための通信にSIPが使われている。
たとえば外出先のパソコンから、自宅に設置したハードディスクレコーダにつなぎたい場合、まずパソコンはm2m-xマネージメントサーバーに自身を登録して、接続相手の機器に対する接続要求を行う。そして認証後、m2m-xマネジメントサーバは接続先である自宅のハードディスクレコーダに接続要求を伝えるが、この時に暗号化のための鍵の交換もマネージメントサーバーが仲立ちをする。
一度、m2m-xマネジーメントサーバーの仲介によって機器同士が接続した後は、データは暗号化された状態で、かつピア・ツー・ピアでやりとりされる。これによって、サーバーに負担をかけることなく、セキュアな通信が実現するのだ。
この方式の特徴は「特定のノード間で、特定のプロトコルの通信を、特定の時間内だけ許可する」といった細かなアクセスの制御が可能で、許可のない機器にはノード自体を見せないということもできる。
このように、m2m-xは情報家電の実現に必要なさまざな要素を満たしており、ネットワークの家電製品が相互に連携し、新たなサービスの基盤となるべく環境を構築するプラットフォームとなる技術だ。これによって、誰もが簡単に、安全にネットワークとテクノロジーの恩恵を受けられる未来が、着実に近づいてきている。
■ユビキタス・オープン・プラット・フォーム(UOPF)
http://uopf.org/
■NTTコミュニケーションズ m2m-xとは?
http://www.v6.ntt.net/06_01m2mx.html








